Rashii

川崎フロンターレ どうしてサッカークラブがそこまでやるの? 教えて井川さん。

みんなで、乗り越えていく。

競技面でも経営的にも右肩上がりの川崎フロンターレ。着実に規模を拡大していますが、そこには新たな課題が生まれていると言います。優勝やプロモーションの効果もあり、チケットの入手が難しくなっているそうです。スタジアムで応援したいのに、チケットが買えず試合を見られない方に対して、どうケアするのか。どうやってつながりを持ち続けるのか。クラブが人気になったからこその新たな課題です。

等々力陸上競技場の収容人数はおよそ2万6千人。収容人数を増やすため2020年の東京オリンピック後に改築が予定されており、改築中は収容人数が減る時期が訪れることになります。スタジアムについては、今後もクラブが根気強く向き合っていかなければならない課題です。それでも、人気がなかった頃を経験している井川さんは、前向きです。

「お客さんが入らなくて困っていたクラブの最初の頃からしたら夢のような話で。でも、今は今の課題があって大変なんですけど、前向きに。また、みんなで一緒に乗り越えていくしかないですよね」(井川さん)

これまでの数々の取り組みを見ていると、スタジアムの問題も川崎フロンターレらしいアイデアで突破していくのではないかと期待してしまいます。どのようにこの課題を解決していくのか、引き続き動向を追いかけたいと思っています。

生きているうちに、できるか。

「生きているうちにできるかな」

井川さんに川崎フロンターレのこれからを尋ねた際にこぼれた想い。クラブが誕生し、自身も20年ともに走り続け、その間クラブは着実に拡大してきました。それでも、川崎に住むすべての人が「川崎はいいな」と思える町にすること、川崎フロンターレを町の文化として根付かせることに挑んでいく、という井川さんの志、パーパスが見えました。

この志を実現するためには、クラブが愛され永くあり続ける必要があります。そのためには、経営面でも持続的に収入を拡大し、チームや選手に投資し、クラブの強みを拡大させるサイクルをつくらなければなりません。その点において、スポーツビジネスも普通のビジネスも違いはありません。

支えてくれる人の数と、クラブへの想いの数、大きさは、スポーツビジネスならではのもの。「フロンターレで川崎を元気にする」。このパーパスがある限り、地元の人たちはもちろん共感し共創してくれるファン・サポーター、パートナーとなる企業や行政、新たな価値を生む技術、ならではを強くするアイデアがどんどん集まってくるはずです。

「子どもができてスタジアムに連れてきて、その子どもたちがまたフロンターレを好きになってくれて、またその次の世代に伝わっていくように。川崎をもっと誇れる町にするために、何十年、もしかしたら百年かかるかもしれないですけど。みんなでやればできると思うんです」

今回の取材で、「一緒に」、「みんなで」という言葉を、井川さんからもサポーターからも、何度も聞きました。クラブとサポーター、パートナー企業・自治体、すべてのステークホルダーが共創して、川崎の価値を高めている。当事者として、仲間として。その良好な関係性の真ん中にはいつも川崎フロンターレがあります。独自のつながりが、川崎フロンターレならではの「八方よし」を実現しています。

川崎フロンターレらしい「八方よし」。

川崎フロンターレの取り組みを、スポーツビジネスの枠の中だけで語るのはもったいないと感じます。常識を疑い、前例のない企画を打ち立て、一人ひとりが当事者として動く。自分たちだけではなく、関わる人たちの幸せも一緒に考える。ともに価値を高め、ともに幸せになっていく。企業のビジネスに置き替えても、取り入れられる部分は多かったと思います。

2019年川崎フロンターレは国内リーグでは3連覇を、そしてアジア制覇を目指してアジアチャンピオンズリーグでの激戦が続きます。魅力的なサッカーで勝ち上がり、「川崎フロンターレらしい」サッカークラブのあり方で、アジアでも尖った存在感を見せつけてほしいと思います。そして、次はどのような企画を仕掛けて、サッカーファンを驚かせるのか。川崎フロンターレ、井川さんの挑戦を、今後も追いかけます。

〈編集後記〉

実力人気ともに日本トップクラスの川崎フロンターレには、ファン・サポーターとも共有する『川崎フロンターレを通して川崎という町を元気にする』というパーパスと呼べる志がありました。
みんなが共感・共鳴できるパーパスがあるからこそ、クラブ独自のアイデンティティやユニークなプロモーション、多様な人たちが共創するコミュニティが生まれ、独自の価値提供、エンパワーメントするサイクルの創出につながっています。
未来に続いていくパーパスを軸に、サッカークラブの枠を超えて様々なことに挑戦する川崎フロンターレらしい取り組みを楽しみながらこれからも追いかけていきます。  吉岡崇

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