私たちの始まりは、“鰹節問屋”
―――経営理念について教えてください
にんべんのはじまりは鰹節問屋です。かつお節の生産者さんがいて、それを買ってくださるお客様がいる。「ミツカネにんべん」が表している3つのイ「かつお節を使うお客様・かつお節を創る人・かつお節の商いをする人」。私たちも含めた、その3者を大切にしようという、とてもシンプルな商いの考え方だと思います。自分と、自分のお客様と、自分の取引先様がいて商いが成立する想いが今も途切れず経営理念に通じています。そして数年前に制作された「にんべんの約束」という、企業メッセージをテキストとイメージ写真でまとめた冊子があります。自分たちはこういうアイデンティティを持っているということを表したもの。こちらもとてもシンプルで不変的なんです。
この国の味、ここから。
- 豊かな海の恵みと四季の育み、伝統の技に磨かれてきた鰹節。
- そこから生まれた「だし」が、この国の食文化を培ってきました。
- 選び抜いた鰹節を届け続けて、三百余年。日本の、この国の、味を支えて。
ここから更に、未来へと進化をつづけていきます。
挑戦の歴史
―――歴史を振り返るといろんな革新的なことをされています。
そこも今の経営理念につながっているのだと思います。にんべんを取り囲む環境が変化し、今まで通りのやり方ではうまくいかなくなったときに、新しいアイデアが生まれています。その背景にはミツカネにんべんが表す3者を大切にする使命感のようなものがあり、新しい提案や、アイデアに取り組んでいく。2010年に開店させた「日本橋だし場」もそうです。きっかけは日本橋エリアの再開発のお話を頂いたことからでしたが、当時の日本橋本店にお越し頂くお客様の大半が、贈答用商品を探しに来ていたそうです。そういった状況をみていた13代がかつお節やだしを身近に感じることのできる店舗をつくりたいと、今までやったことのないことにチャレンジすることで、飲食店、飲食業界に踏み出したということになります。
にんべんの挑戦の歴史
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現金掛け値なし
創業当時の江戸時代はその場で現金を支払わない「掛け売り商法」が基本。しかし品質に見合った適正な値段でその場で決済をする「現金掛け値なし商法」を創業者が実践。その画期的な商法で多くの町民から支持を得た。
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かつお節用のカビ開発と
特許無償公開かつお節のカビは室(むろ)に入れれば自然に付着することからあまり研究されてこなかった。にんべんの研究員は品質の安定に最適なカビ選抜に成功、特許を取得。業界のために無償公開した。
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つゆの素の商品化
天然のだしは劣化が早い、開発不可能という食品業界の常識を覆し、素材・殺菌方法・容器密閉性すべてを見直し商品化に成功した。時代のニーズに合わせた改良を今も続けている。
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フレッシュパックの
商品化かつお節は急速に酸化し風味がすぐに落ちてしまう。そこで使う分だけを小分けにし、酸素を通さず水分を逃がさない透明フィルムの採用により商品化を実現させた。
にんべんの歴史を紐解くと、商法や製造・商品など時代のニーズに合わせて様々な革新を起こし、ずっと挑戦を続けてきた会社であることがわかります。そしてその挑戦は今も続いています。背景には問屋業らしい生産者・お客様・にんべんの「三方よし」に通じる経営理念。生産者とお客様の間で、自分たちの存在意義(パーパス)を発揮することで革新を起こしてきたということです。さらにかつお節とだしの可能性についてお話を聞いていきます。