Rashii

「食」と向き合う、をつくる。

自前のフードロス論、
持っていますか

―――日本のフードロスの問題点、課題というものはどのように考えていらっしゃいますか。

平井氏:そうですね。なんて言ったらいいでしょうか。食品ロスが起きる原因って様々ですし、一個つぶせばすべて解決する問題でもないので。また、企業とか個人とか自治体とか、まあいろんな主体になる人たちがいてそれぞれに理屈があるので。フードロスに限らず社会課題がそういうものでもあると思うのですが、トレードオフじゃないですけど、こっちを立てればこっちが立たなくなるというものがあるので。そういう時に、大事なのは「自前のフードロス論」って呼んでいるんですけど、自分でフードロスに対する向き合い方を考える、持つ、ということじゃないかと思っています。

それを持っている人がなかなかいないので、話し合いもできない。あと、ニュースになったことを鵜呑みにするしかなくて、「恵方巻が節分の次の日にあんなに捨てられるのは良くない」ということで署名活動して、販売しないようにコンビニに言おうとか、農林水産省に署名を出そうとか。もしかしたら、それで恵方巻のロスはなくなるかもしれないけど、恵方巻の文化もなくなるかもしれない。それでそれを仕事にしている人の職も大げさな話かもしれないけれど、なくなるかもしれないじゃないですか。

例えば、個人的に「フードロスハラスメント」とか言うんですけども、宴会とか行くと食べ物が残った時に「お前食べろ」って言われるんですよ。「お前、そんなこと言ってるなら残すなよ」って。もちろん笑い話ですけど。でも、目の前の食べ物を無理して食べることが、いいことなのかっていう。無理して食べるのは楽しくないですし、確かに目の前のロスは救われますけど、いいことなのかと。僕も、その時その時違いますし。そういうことがすごく難しい。白と黒だけではっきり結論づけるのはできない問題の中で「自前のフードロス論」を持つべきだなと思うんですよね。だから個人個人が食に対するリテラシーを持つべきだなとは思っています。

リテラシーの底上げが、
「いっしょにやる」をつくる。

―――そういう意識がまだまだ足りないってことでしょうか。

平井氏:まあ、そうすると企業もいろいろなアクションを起こせるようになるんじゃないでしょうか。よくエコバックを例に出すのですが、「エコ」とか名前がついているから、出始めの時は環境に関心のある方が使うアイテムだったと思うんですけど、今はもうそんなに意識していなくて、逆にファッションだからとか、使いやすいから使っているじゃないですか。それくらい習慣化すると、企業もレジ袋を有料化できたりすると思うんです。

そういうカタチで習慣になったり、みんなのリテラシーが上がると企業も動きやすくなるんじゃないか。コンビニであんなに食品が並んでなくても、もしかしたらいいかもしれないですし。でもやっぱりいまだにホテルビュッフェに行ったらいっぱい並んでないとがっかりしますし。お金を出してるのに「何でないの」ってなっちゃいますし。そこは企業だけを責めるわけでもなく、だからといって個人が背負い込むのではなく。まあ、いろいろな主体の人たちがいっしょにやるべきだと思います。

ひとり一人が「自前のフードロス論」を持つべき。日本のフードロスの取り組みがさらに広がっていくには、食のリテラシーを上げていくことがポイントであるということがわかりました。また平井氏の指摘は、フードロスの問題だけではなく、ニュースを鵜呑みにしてしまいがちな、日本の風潮への警鐘のようにも感じました。このような課題感を背景に、社団法人フードサルベージの具体的な取り組みについて話を進めていきます。

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