地域でイノベーターを育むべき。
―――子どもへの教育という観点で、どのような取り組みをされていますか。
齋藤氏:2018年の夏休みからはじめてみたんです。学校でも教えていると思うんですけれども、社会課題に対して「解決方法はどういうものがある?」とすごく頭を使って考えることをやっています。あと、「考えすぎない」、「まず手を動かしてみる」っていうことを教えるようなセッションをしました。プロトタイピングだと思うんですけども。
SDGsを12個、テクノロジーも12個くらいに絞って、「掛け算であなたたちには何ができますか?」というようなものとか、絵を描いてもらって「20年後の世界を見た時に、あなたは自分の持っている船でどの社会課題を解決して、どの島の人たちを助けに行きたいですか?」と。イメージとしては、ワンピースの世界みたいな。「海賊王に俺はなる」って決めたら、その強い気持ちを打ち出すことによって仲間が集まって来るし、みんなそれぞれ違う夢を持っているけれど一つに集まっていくというものがあるということを、ワークショップを介して学ぶ。そういうことをいろいろと試行錯誤しています。
―――子供のうちからそういう意識が芽生えるってすごく重要ですよね。
齋藤氏:そうだと思います。特に義務教育に関しては、社会性とか生活習慣を身につけるという意味ではすごくいいことなのでやればいいんですけど、その外側でのイノベーターの創出みたいなのは学校ではもうできないというのはわかっているので、学校に期待せずに地域社会でやるっていうモデルをつくるべきだと思います。例えば1人でもイノベーターが生まれたりとか産業が生まれたりすると、そこから地域は恩恵を受けられるので地域社会で育てるというか、積極的にやるべきじゃないかなと思っていて。
とりあえずトライアルだったのですが、いろんなところに広げたいなと思っています。似たようなプログラムを他でやっている人たちともぜひ連携していきたいと思っていて、そういうものを地域社会で例えば月一回でやっていると子どもたちにとってはちがうんじゃないかなと思っています。
―――以前、取材した石坂産業さんがプラントの裏に里山を持っていて、そこで環境教育という体験型の教育を展開しているんです。体験教育として何を教えるのかというと、「決断する」ということを教えるっておっしゃっていたのですね。ちょっと今のお話と重なるところがあると思います。
齋藤氏:決断するってすごくいいですね。やっぱり、「どういう未来をつくっていきたいか」っていうのを子どもたちに考えてもらう。そういうマインドを持っている子が来るっていうところがあるので一般的になるかどうかは難しいとは思いますけれど、ただ続けていくべきかなと。
コンテンツは逆にもっとオンラインで提供したりとか、今は学校の指導要綱があるのでそれに従ってやらなくてはいけないですけれども。多分明治時代のモデルのままなんで。いかに富国強兵をするかというモデルのまんま続いているものは壊しようもないし、どうしたらいいんだろうっていう。
そういうものって企業も全部一緒だと思います。学校もそうですし、政治もそうですし、教育もそう。別にそれを変えなきゃいけないとか、倒せと言っているわけではなく、変わりましょうっていうことと、変われないんだったらやり方がありますよっていうことを言っていて。外圧を使うというか、外で実験をして中に取り込むやり方があるんじゃないかなと。
日本から
イノベーションを起こす。
―――シンギュラリティにもありましたが、これから人間はどれくらいまで生きるんですかね?
齋藤氏:100歳以上、私は生きると思いますね。私がすごく影響を受けた人がいるのですけども、3年前に会った時に「いや、150歳まで生きようと思う。決めた。だから今やるべきことは会社で働くことではない。だからできることは全部やるし、そのためのことは今やらないといけないよね」と。決めたらもう未来志向になるしかないので、だったら「60歳まで働いて定年になるこの会社にいることはあんまり意味がない」みたいな。
この時代発信をするといろんな人に刺さるので、発信をしていくべきかなと思います。本当に最近思うのは、今44歳なんですけど、40歳を過ぎてからの数年間めちゃくちゃ早いですよね。
我々の孫くらいの世代が最後の現生人類になって、ポストヒューマンになるというのはほぼ間違いないと思うので、我々がなるか彼らがなるかだと思うのですが。子どもたちに「150歳まで最初に生きる人類、人間が今もう生まれていると思うか?」という質問をしたら、「もう生まれてる」って。「僕はもう150歳まで生きますよ」っていう子どもが何人かいたので。150歳まで生きるってことは、多分200歳まで生きるし、200歳まで生きるってことは、もうほぼ永遠になってるっていうことですし。それはもう止まらないので、覚悟を決めて、だったら波の先端に乗ってたほうがいいんじゃないかな。
―――200歳ですか(笑) 未来志向で数々の取り組みをされている齋藤さんですが、これから成し遂げたいことは何でしょうか。
齋藤氏:私は「よりよい社会をつくりたい」と思っていて、「そのために何ができるか」ということは考えています。「みずからイノベーションをおこしていかなくてはいけない」と思いますので、それは自分でもいっぱいプロジェクトをやっていきたいと思っています。だから大学の先生になるとかはあまり考えていなくて。理論でものを言うんじゃなくて、「やろうよ」ということだと思いますし、そのために仲間をいっぱい集めたいし、まずは想いで変えていきたいと思っています。
3年前にみずから立てた目標は「300万人の同志を集める」、「日本からイノベーションを起こす」。300万人の根拠は団塊ジュニアの48年・49年生まれの世代っていうのは一学年200万人くらい。彼らが今日本で労働人口が多い層なんで、それを何世代か集めて、全員起業したら日本の国は大変なことになるぞっていうくらいの感覚でいて。そのためには、一歩ずつ集めたいと思いますし、発信していきたいと思っています。そういう想いでやっています。
300万人がみんな好きなことをしはじめると、この国は変われそう。一番コアな岩盤層、団塊ジュニアもあと10年くらい経つとパワーを失ってくると思うので、その前にやらないといけないです。待ったなしかもしれないですね。
エクスポネンシャルにものごとが進化する時代を「どのように捉えたらいいのか」、「何をすべきか」指針になるお話を齋藤さんに伺うことができました。一般教養としてテクノロジーを理解する力、エクスポネンシャルテクノロジーを俯瞰する力、ムーンショット構想力。そして「自分が何をしたいのか」という志でありパーパスに遡る重要性。未来をつくるのは誰かではなく、私たち一人ひとりだということを認識して、エクスポネンシャル思考を身につけ進んでいかなければと強く思いました。 吉岡崇