社会課題を解決しながら、いかにビジネスとしてしっかり儲けているのか。
その神髄とボーダレス・ジャパンの志に迫ります!
VOL .04
社会課題解決の仲間を増やすことを大切にしている鈴木氏も、近ごろ耳にすることが増えた大企業のソーシャルビジネスへの取り組みについては懐疑的です。
「僕はほぼ無理だと思っています。既存のルールに適合させて利益性を追求した組織モデルに混ぜ込もうとすると破綻してしまう。別組織としてゼロベースで立ち上げる、既存の枠組みと分離した形でつくるしかない」
そこには、ソーシャルビジネスしかやらない会社としてのプライドもあるでしょう。もちろん、大企業が持つ技術的強みや独自のインフラがあることを評価した上で、「その資産をスタートアップやソーシャルスタートアップへの支援として注入することでビジネスになり、社会にインパクトを生み出すことにつながるやり方がいい」と言います。ここでも、どうすれば世の中で増え続ける社会課題を一つでも多く解決し、社会にインパクトを出せるかというボーダレス・ジャパンの信念が見えます。未来の社会構造がどうなるかを見据え、一人ひとりが幸せになれるような世の中、枠組みとは何か・・。
「小さなコミュニティがたくさん生まれてくるのが未来像。コミュニティでみんながお互い助け合ってハッピーになるというのをどれだけ世の中が多く生み出していくかだし、それをうまくつなぎあわせられるか」
この考えは、私たちが取材したいくつかの企業でも浮かび上がった「地域に密着して分散型の価値を創出する」、「顔の見える距離、規模での価値創出」という考えとイコールだと感じます。実際にバングラデシュで事業が生まれたり、宮崎県で事業がはじまったり、またある事業はグアテマラの社会課題を解決するために生まれたり。コミュニティにある社会課題を解決し続けるボーダレス・ジャパンが思い描く未来像には、同じ志を持ち、同じ方向に向かう仲間がいれば、世の中は変えていけるんだと信じさせる強さがあります。
「これから社会がどんどん個別分離していく流れでは、できるだけ小さいグループで顔が見える関係性の中で経営することで親和性も高くなる。中小企業が自分たちの仲間、社会課題の困っている人たち、お客さん、全部ワンセットで、みんながハッピーになるモデリングができていくっていうのがやりやすいと思うんです」
ボーダレス・ジャパンでは、社会課題解決のスピードをあげるための策の一つとして「社会起業家養成所」を始動させました。いきなりの起業ではなく、田口社長や鈴木氏、外部から招いた講師と共にソーシャルコンセプトやビジネスプランをつくる経験を通して、起業するためのノウハウを吸収させる。自分がやりたい事業を見つけられる。起業のハードルを下げることにつなげていくそうです。社会課題を解決する仲間を増やすこの取り組みは、ソーシャルビジネスに精通したボーダレス・ジャパンらしいものです。
まだまだ世界には社会課題が放置され、解決を待ち望む人たちがいます。また社会課題の解決には、多くの仲間を必要とします。そして一度はじめると簡単にはやめられない事業です。だからこそ「社会起業家のプラットフォーム」から成功する仲間を増やし続ける必要があります。ソーシャルビジネスしかやらない会社「らしい」仕組みや志、ノウハウで様々な社会課題のファーストペンギンであり続けようとするボーダレス・ジャパン。「ソーシャルビジネスで世界を変える」挑戦に、終わりはありません。
【編集後記】
ボーダレス・ジャパンに関わるすべての人たちが共有するパーパス。企業として「社会に何をしていくのか」を明確に定義する重要性を再認識するとともに、ボーダレス・ジャパンから私たちはどんな学びを得て、この先に活かしていけるのか私自身も考えていきたいと思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
取材・文:吉岡崇
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株式会社ボーダレス・ジャパン
2007年設立。「ソーシャルビジネスで世界を変える」をスローガンに、貧困や人種差別、環境問題など世の中から放置されている社会課題解決に取り組む。世界を変えるスピードをあげるために、「社会起業家のプラットフォーム」をつくり起業を全面サポート。「ソーシャルビジネスしかやらない会社」として、利益をあげながらソーシャルインパクトを生み出し続けている。
https://www.borderless-japan.com/