社会課題を解決しながら、いかにビジネスとしてしっかり儲けているのか。
その神髄とボーダレス・ジャパンの志に迫ります!
VOL .02
ソーシャルビジネスの根本であり、最も大切なものだと言うソーシャルコンセプト。通常のビジネスのようにビジネスモデルや商品、技術から出発するのではなく、はじめに社会課題解決のための現状の課題、理想形を明確に定義し、方法論を提示できる具体的なコンセプトメイキングからスタートします。この工程には田口社長もしくは鈴木氏が伴走し、約2ヵ月の時間をかけてとことん突き詰め、磨き上げるのだそうです。
「将来的に社会を変えていくソーシャルインパクトをつくるために、社会課題に苦しむ人たちが今置かれている状況が解決された先にある理想像とは何か?それを実現する独自のソリューションは何か?をしっかり描く必要があります。重要なのは独自であること。ソーシャルコンセプトが具体的でない限り、うまくいきません」
ボーダレス・ジャパンでは、ビジネスモデルはあくまで社会課題を解決する「手段」でしかないと捉えている点が通常のビジネスとの違いです。既存の経済社会ルールでは解決できない課題に向き合うからこそ、常識を超えた独自性のある仕組みやルールをつくるためのビジョンや理想像を描き、語れることが重要になってきます。ソーシャルコンセプトは、コンセプトでありビジョンであり、そして課題に悩む人たちの存在を社会に気づかせる矢印でもあると感じました。
「ソーシャルビジネス」で世界中の社会課題解決に取り組む。
自己満足であってはいけない。
儲かる形をつくって、
続けるために。
鈴木氏に話を伺っていると要所要所に「ソーシャルインパクト」というワードが出てきます。ボーダレス・ジャパンの各事業が社会課題の解決にどれだけ寄与できたのか、理想像にどれだけ近づいたのか、を測るための指標としてのソーシャルインパクトです。
「社会にインパクトを生み出して、きちんとお客さんにも喜んでもらわなきゃいけない。そして、儲かる形をつくらなきゃ、続けられない。いいことをしていても、ソーシャルインパクトを拡大できなければそれは自己満足でしょ、と」
実際にミャンマー・リンレイ村のタバコ栽培で農薬被害に苦しむ貧困農家の社会課題解決にも、ソーシャルインパクトへのこだわりが見られます。現地で栽培する葉巻タバコの葉は穴が空くと売れなくなるため、長年に渡り大量に農薬を撒き続け、結果土地が弱くなりさらに肥料を投入。土地は弱り続け、農薬のコストがかさみ借金に苦しむという悪循環に陥っていました。
「よくありがちなのが「農家さんの技術力が弱いからだ」と言って、オーガニックを作れるように技術指導しますみたいな話。間違ってはいないけれど、インパクトがすごい小っちゃいことをやって、ある意味自己満足だねって。この課題の本質に対する切り口をどこに置くかなんです」
農家と顔が見える関係で「オーガニックハーブ」を直接取引。
そこでボーダレス・グループの「AMOMA」はコミュニティトレードを導入し、「農家とダイレクトにつながり、顔が見える距離感に戻した上でビジネスとしてまわる形をつくる」ことこそ、この課題の本質だと捉えたそうです。そしてソーシャルコンセプトを設定し、ビジネスモデルをつくりこみ、その結果ソリューションとして選んだのが「ハーブ」だったという順番だと言います。
「ハーブティーをつくりたいから始まったんじゃないです。農家さんの条件を考え、技術力がなくても、資金を多く投下できなくてもつくれる作物。ここはハーブがつくれる、つくりやすいからということでハーブだった」
技術に関することはもちろん、農家の借金の立て替え、彼らがハーブを栽培するための環境整備にも資金と人材を投入したそうです。収穫したハーブは全量買い取りで、マーケット連動ではなく農家の人が必要な生活費を元に算出した市場よりも高い額で買い取ることを保証。そのため、儲かる仕組みをつくらなければ事業は継続することができません。そこで「AMOMA」は、オーガニック栽培されたハーブをミャンマーの自社工場で乾燥・粉砕してから日本へ。カフェイン摂取を気にされている妊娠中や授乳中のお母さんに向けたハーブティーを開発・製造することで売上を立て、お母さんたちの悩みを解決するブランドになりました。
「新しいマーケットをつくり出し、そこでNo.1の地位を確立する。妊娠中や授乳中のお母さんたちが本当に困っていたものを、喜んでいただける形に連結できたのでいい事業になっていますよね」
ソーシャルインパクトの拡大という観点では、直接取引する契約農家数が増えています。さらに、現地の農家さんの経済的豊かさと「お母さんの役に立つハーブをつくっている」というやりがいも同時に生み出し、良いサイクルを地域に生み出しているのが印象的です。
図) AMOMA natural careのソーシャルインパクト
「ソーシャルビジネスしか
やらない会社」のプライド。
ボーダレス・ジャパンでは事業ごとに、設定したソーシャルインパクトとその結果について公表をしています。そこには「ソーシャルビジネスしかやらない会社」としての矜持が見えます。そして、短期的な取り組みではなく長期的に社会にインパクトを生み出し、拡大し続けていくという覚悟も。
ソーシャルビジネスと通常のビジネスとの間には、思考のプロセス、ソーシャルコンセプトの設定、手段としてのビジネスモデルなど捉え方に違いが見られました。それは、どんな時も「この社会課題を解決するには」という問いがぶれないボーダレス・ジャパンらしい強みなのだと思います。
世界各地で次々に事業が生まれるボーダレス・グループ内では、どのように強みや想いを共有し、進化させているのでしょうか。ボーダレスならではの組織のあり方についてお聞きしましたので、次回お届けします。
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株式会社ボーダレス・ジャパン
2007年設立。「ソーシャルビジネスで世界を変える」をスローガンに、貧困や人種差別、環境問題など世の中から放置されている社会課題解決に取り組む。世界を変えるスピードをあげるために、「社会起業家のプラットフォーム」をつくり起業を全面サポート。「ソーシャルビジネスしかやらない会社」として、利益をあげながらソーシャルインパクトを生み出し続けている。
https://www.borderless-japan.com/