社会課題を解決しながら、いかにビジネスとしてしっかり儲けているのか。
その神髄とボーダレス・ジャパンの志に迫ります!
VOL .03
バングラデシュで雇用を創出している本革製品事業。もちろんこの事業も「革ありき」ではなく、働く場所がない貧しい人たちの問題を解決するためのベストなソリューションは?という問いが出発点。
「革製品をやりたいからやっているわけではなく、社会にインパクトが出るからやっています。シンプルにそれだけなんです」
ボーダレス・ジャパンのおもしろい特長の一つが、「どの事業もド素人からはじめている」(鈴木氏)ことです。課題解決のソリューションとして、現地の祭事で有効活用されていなかった「牛革」と決めた際も、鈴木氏を含め誰一人として革製品の専門家ではなく、つくり方を知らない状態。一般的な企業の場合、それで事業がうまくいくのだろうか?と疑問が生まれてもおかしくありません。そこは、ボーダレス・ジャパンの創業者である鈴木氏ならではの行動力です。日本メーカーで革包丁を研ぐところからはじめ、型紙を切ったり縫製を学んだり、文字通り四六時中、革に触れ、技術を身につけながら革製品の本質、クオリティの本質を追求したそうです。「プロはいないけれど、実は大丈夫」と当時を振り返りながら語ります。その後、バングラデシュに工場を建て、生産管理に向き合った際も同じように学び、インストールし続けてボーダレス流をつくり出したそうです。
「ソーシャルビジネスは人をものすごく重視します。人間を中心に据えて、物事を組み立てていくという順番が非常に強い。工場で仕事をする仲間が誇りを持って楽しく、プロとしてやれる仕組みってなんなんだろう?から入っちゃうんです」
事業を進めていくと、思ってもいないような様々な課題にぶつかる。そこで試行錯誤しクリアした先に、独自の価値、強みが生まれることを、鈴木氏をはじめとしたボーダレス・グループは実感としてわかっている。その体験、思想が、「ソーシャルビジネス」を前に進める原動力になっているのだと、筆者は感じました。
全グループ会社で財布を同じにするという、ボーダレス・ジャパン「らしい」おもしろい仕組みがあります。各事業会社は自社投資分を除いた利益を「ボーダレス・グループの財布」に還元。鈴木氏はそのことを「身内化」と言い、利益はもちろんノウハウも、人材も、グループとして共有するのです。
「ずっと輪っかが連なっている、想いの連鎖というものを設計上つくっているのがすごく重要です。お金もノウハウも投入して、うまくいくようになったらまたみんなに恩が送られてくる。この順番をずっと繰り返している組織体です」
ボーダレス・ジャパン
ならではの「恩送り」
財布を共有し、「恩送り」を続けるボーダレス・ジャパン独自の仕組み。
上記の図のように、ボーダレス・ジャパンの最初の事業である多国籍コミュニティシェアハウスを運営する「ボーダレスハウス」が利益を生み出し、それをハーブティーの製造・販売を手がける「AMOMA」設立のために投入。そこで生まれた利益は、またその次の事業設立のために、というようにボーダレス・グループの中で「恩送り」を続けています。
共同体経営ということで、お金の使い方や新事業の立ち上げについても、全事業の社長の合議制で決定しているそうです。そのため、どの事業も他人事になることなく全社長が自分の事業のように、事業プランがうまくいきそうなのかどうか、うまく活かせられるかどうか、という問いをし続け、世の中のためのベストな方法論を模索することにつながっています。
「僕らは共同体なので共によくしていこうという話です。うまくいかない事業があってもあいつはダメだったねという話で終わらなくて、それをうまく活かせられなかった俺らの責任じゃん、ということになる。だから僕らも徹底的に頑張らないといけない」
ボーダレス・ジャパンでは、利益を増やすことが目的でなく、「ソリューションを増やすこと」、「仲間を増やすこと」が重要だという志向になっているため、組織内でよくありがちな「利益を食った、食われた」というような話には一切ならないそうです。ここでも「ソーシャルビジネスで社会課題を解決する」という志があることの重要性を感じさせます。このマインドの持ち方は、日本のビジネスパーソンにとっても気づきになるのではないでしょうか。次回は、鈴木氏にお聞きしたソーシャルビジネスの未来についての考えをお届けします。
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株式会社ボーダレス・ジャパン
2007年設立。「ソーシャルビジネスで世界を変える」をスローガンに、貧困や人種差別、環境問題など世の中から放置されている社会課題解決に取り組む。世界を変えるスピードをあげるために、「社会起業家のプラットフォーム」をつくり起業を全面サポート。「ソーシャルビジネスしかやらない会社」として、利益をあげながらソーシャルインパクトを生み出し続けている。
https://www.borderless-japan.com/