社会課題を解決しながら、いかにビジネスとしてしっかり儲けているのか。
その神髄とボーダレス・ジャパンの志に迫ります!
VOL .01
取材・文:吉岡崇
仕切りがほとんどないオープンで活気のあるオフィス。そこでは、革製品のチェックをする人、外国人の入居者の調整をする人、商品発送のための梱包をする人、手話を用いて新事業の打ち合わせをするグループなど、職種も事業内容もまったく異なる人たちが「ソーシャルビジネスで世界を変える」という同じ想いのもとに集い、それぞれ社会課題の解決に取り組んでいます。
2007年に田口一成社長と鈴木雅剛副社長の二人で立ち上げた「ボーダレス・ジャパン」は、今では従業員が900人を超え創業以来11期連続で売上を伸ばし、世界9ヵ国、11拠点で事業展開をしています。多国籍コミュニティシェアハウスの運営やバングラデシュに雇用を創出する革製品事業、日本国内でのリユースショップの運営など事業内容も多彩です。
「マーケットから放置され儲からずに誰もやらない問題、社会の欠陥、不合理から生まれる問題、社会生活に支障をきたす問題を「社会課題」として捉える。そして、問題を解決するためには、常識や既存の経済社会ルールをぶち壊さなきゃいけない。そこに果敢に取り組んでいくのが「ソーシャルビジネス」です」
そう鈴木氏が語るように、ボーダレス・ジャパンは、不満・不便・不快と言った不を解消するビジネスは普通のビジネスとして捉え、既存のルールや常識を壊しながら「ソーシャルビジネスだけ」で成長を続けています。
大変で儲からないイメージのある社会課題解決ビジネスですが、事実、社会課題に向き合う様々な人たちの共通の課題として、継続するための「お金がない」という悩みがあるそうです。だからこそ経済的な活動を通して解決するソーシャルビジネスで「しっかりお金が回る仕組みをつくって継続的に解決し続けられる、インパクトを広げるやり方を取っていく必要がある」というのがボーダレス・ジャパンの考え方。
ソーシャルビジネスでしっかりと収益を上げ、規模を拡大させながら継続的に展開できるようになった分岐点。それは「このままのスピードでは世界は変わらない」という危機感からとった「社会起業家のプラットフォームになる」という選択でした。
ボーダレス・ジャパンは、
「社会起業家のプラットフォーム」になることを決意。
「社会起業家の数は、解決される社会問題の数とイコールであるだろう。それなら一人でも多くの社会起業家が世の中に出て行けば、一つでも多くの問題を解決できる。それに一生懸命取り組む会社が一つあっていいじゃないか」
その決断には、二人の経営者の考えが根底にありました。世の中を変えたいという志を持つ社会起業家が成功するのが難しい現状を、なんとか打破したいというボーダレス・ジャパンの新たな挑戦でした。
ボーダレス・ジャパンでは、起業を希望する人に事業ノウハウや資金、人材も提供し、事業のことだけに専念できる環境を用意します。
「起業家にはお金の心配なくスタートしてほしい。起業家はスタートアップの時に重要なマーケティングのプロでもないので、ボーダレス社内にいる各分野のプロが黒字まで伴走します」
ボーダレス・グループの使命の一つでもある「社会起業家という仲間を増やす」こと、そして「このグループが何のために存在するのか」というパーパスを持っているからこそ当たり前の事業立ち上げのサポート体制なのです。
ボーダレス・ジャパンは社会起業家が事業に失敗することが、どれだけ大きな社会的損失になるかを知っています。だからこそ、社会を変えるという志を持った人が社会にインパクトを出せるように「社会起業家のプラットフォーム」になり、ボーダレス・ジャパンが持つあらゆるものを提供し共有するのです。その中でも、最も大切にしているのが「ソーシャルコンセプト」の設定だと言います。これこそが、「通常のビジネスとの大きな差であり、ソーシャルビジネスの根本だ」と鈴木氏は語ります。事業を起こそうとする起業家に田口社長や鈴木氏が伴走し、2ヵ月かけて磨き上げるソーシャルコンセプトとは、どういうものなのでしょうか。
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株式会社ボーダレス・ジャパン
2007年設立。「ソーシャルビジネスで世界を変える」をスローガンに、貧困や人種差別、環境問題など世の中から放置されている社会課題解決に取り組む。世界を変えるスピードをあげるために、「社会起業家のプラットフォーム」をつくり起業を全面サポート。「ソーシャルビジネスしかやらない会社」として、利益をあげながらソーシャルインパクトを生み出し続けている。
https://www.borderless-japan.com/