Rashii

ユニリーバ LUXのパーパス・ブランディング

女性はみんな、
輝く権利をもっている。

―――LUXのパーパス・ブランディングについて教えてください

河田氏:LUXのパーパスとして女性の輝き、その人が輝きたいと思った道を当たり前に選べるようになるということで、どういう社会を実現したいのか、ずっとこの2、3年考えていました。

LUXは去年で30周年迎えました。30年前の日本は、ちょうど男女雇用機会均等法が法律として整ってきた年なんです。女性が今までずっと専業主婦の方たちが多かったのが、そういう法律などが整備されて、だんだん働く女性がやっとぽろぽろ出始めたみたいなときで。当時はシャンプーの市場としては、最低限の地肌を優しく洗うっていう便益のところしかなかった。そこにLUXはビューティブランドとして「髪からあなたに自信を与えます」「あなたが輝きたい道をどんどん進んでください」という応援の意味を込めて誕生しました。女性の活躍支援や輝き支援は、実はローンチからのブランドヘリテージだったんですね。

そこから30周年、トップの道をずっと走り続けてきましたが、30年たって環境としてはだいぶ女性が働きやすくなったり、インスタなどいろんな自己表現の場が増えたり、自分が本当にやりたい道をかなえるための方法がいろいろできてきたとは思うんです。とはいえ、グローバルで比べると、日本はジェンダーランキングでもまだまだ下のほうですし、女性の役割について、こういうふうにあるべきっていうことが、無意識のレベルで社会に擦り込まれているのではないかと思っています。それは誰かが悪意を持って女性はこうあるべきって言ったのではなく。ちっちゃい頃から「サザエさん」を見て家庭の中の女性像や、保育士さんは決まって女性だったりと、何となく自分のケアをしてくれる人は女の人みたいなイメージがついてしまった。女性も役割とか振る舞いに、それが知らず知らずの間に出てしまう。自分が本当に進みたい道と違うってなったときに、そんなの気にしないと思いつつも、でもどこかやりづらい自分がいたり、後ろ髪を引かれる思いだったりしているのではないかと思います。そういう無意識の先入観っていうところを、まずはどういうふうに社会に気付きを与えられるのか?そして気付きを与えるだけじゃなくて、LUXが具体的にできることは何か?をずっと考えてきて、ようやくローンチできるようになりました。

働く女性にとっては1日の大半を職場で過ごしています。そこで本当にジェンダーイクオリティが実現できているかとなったときに、職場におけるターニングポイント、マグニチュードが高くなる局面は幾つかあるのではないかと思います。分かりやすいところで言うと、結婚、出産。そのタイミングでキャリアについて考えますよね。そして子育てが落ち着いて再雇用のタイミングや、管理職になるタイミングだったり。いろいろディスカッションをしていくうちに、そういういろんなタイミングの中で、一番スターティングポイントのところの採用のタイミング、ここの先入観を取り除くことがすごく大事なのではと気づきました。

LUX Social Damage Care Project

日本経済新聞2020年3月6日掲載の新聞広告 日本経済新聞2020年3月6日掲載の新聞広告

河田氏:例えば営業を探していたときに男性を選んでいたり、特に採用のスクリーニングのところで、写真や性別で無意識なレベルで選んでしまうという問題があります。全国の採用担当者を対象に調査を行った結果、4人に1人は「採用過程において、男性と女性が平等に扱われていない」、さらに44%の人が「写真の映り方の印象が、採用の有無に影響する」と回答しています。LUXのブランドのアクションとして、そういうことをまずは取り除いていく。ユニリーバとして、履歴書から自分の下の名前と写真、男女のチェックボックスをなくす、完全に性別が分からないようにするということを実現していきます。

例えばユニリーバに来たいという方がいたとします。その方に、ユニリーバはこういうコンセプトの中で採用していて、性別が分からないようにしたいので、履歴書のところはここを抜いてくださいと説明します。写真貼らないでください、下の名前書かないでくださいって、まずワンステップあるわけです。そして最終的に本当にそれがマスキングされているのかどうかというのを確認しなければならない。実はすごいコストもリソースもかかるアクションなんです。一度始めたらずっとやらなきゃいけないことなので。なので、早急にこれ、社会全体に広めて、いち早く社会の標準がそうなってほしい。今売られている履歴書から性別がわからないように記入欄をなくしたい。

LUXのメッセージは、採用において能力ややる気を見るべきであり、そこに性別は関係がないということ。これは男女、どちらにも言えることです。男だから、女だからどうっていうところではなくて、最初のスクリーニングのところは、個人の能力と志望動機とか、他に見るところがあるということを伝えたいのです。

履歴書から顔写真をなくす―今まで常識とされていたことを変える、ブランド自体が具体的にリスクをとって行動にうつす。それはブランドメッセージに真実味をもたらします。パーパス・ブランディングの重要なヒントが、ここにあるのではないかと思います。ユニリーバではそれをBrando DOと呼んで、パーパス・ブランディングの重要なプロセスとして位置付けています。Brand SAY、Brand DO、ユニリーバのパーパス・ブランディングの考え方とは?

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