Rashii

余白創造のプロフェッショナルになりたい。

自分たちがやりたい新たな取り組み。
STORAGE・ IT・TENNOZ

―――大胆な経営改革も行われていますが、その背景にはどのようなことがあったのでしょうか?

月森正憲氏:資産を抱えてしまうと拡大していくときに身動きが取れなくなってしまいます。そこで会社規模もスリム化させ、自分たちがやりたい新たな取り組みとして、天王洲を中心にITを使った仕組み作りを行いました。事業拡大をしたい会社さんとはパートナーシップを組んで、我々の仕組みを使って実現しましょう、と。変化することの重要性も意識として刷り込まれているので、コンパクトに始めてみて変化に応じて拡大していけばいいし、チャレンジしてだめだったら閉じればいいし、という考え方ですね。
一番最初に当時の代表であった中野に言われたのが「稟議書をつくらないのは仕事をやっていないのと同じだ」ということ。それまで稟議書は作りたくないなと思ったり引っ込めたりしていたんですが、「変わるためにどのように投資するか?」といったことを一生懸命に考えないと仕事をしていないのと同じだと言われてからは、私も臆せずにどんどん稟議書を提出するようになりましたね。

―――事業の鍵でもある「IT×STORAGE」。そのサービスのひとつでもある「minikura」について教えていただけますか?

minikura(ミニクラ) minikura(ミニクラ):だれもが箱単位で倉庫を持てるクラウドストレージ
1箱200円から荷物をお預かりし、ネット上でリスト管理や品物の取り出しなど、いつでも簡単に行うことが可能です。

月森正憲氏:寺田倉庫が変わっていこうという過渡期に、ちょうど「minikura」がプロジェクトとして立ち上がりました。当時は法人向けの拡大路線に走っていた時だったので、荷主さんの荷物を取り扱っておけば安定という考えだったんです。しかし、取り扱い量はお客様の業績やサービスの伸びに比例して増減するため、これからはそこに左右されないようなサービスをつくらないといけないという思いが非常に強くありました。荷物を単にお預かりするだけでなく、自らサービスを作って、自ら取り扱い数量を伸ばしていくという、どちらかというと「事業を作る」ことに近かったかもしれません。

―――モノに対する価値観が変化していくなか、「minikura」もそうだったと思いますが、法人を相手にしていたときと、個人を相手にするときではコミュニケーションなども変わってくると思うのですが、苦労したことなどはありましたか?

月森正憲氏:一番苦労したのはIT会社ではないので、アイデアがあったとしても「そんなことできるの?」とか、「立ち上げにいくらかかるの?」「リスク高くない?」みたいなところですね。そこを実現するのは苦労したかなと思います。
それと、倉庫会社は「裏に隠れている存在」だからか、なかなか自分たちのやっていることをアピールしたがらない側面があったんです。でも、「minikura」を世の中に発信してみたら、ものすごく評価されたんですね。そこからは会社の見方も変わってきて、手ごたえも感じるようになりました。
「箱を開けて一点一点、写真を撮ってくれる」とか「預けたものを一点一点取り寄せができる」とか。これ、普通に考えれば当たり前なんですけど。あえて言う必要がないと思っていた機能の素晴らしさだとか、そういったアピールが下手だった。そこをあえて言うことで社外からの評価が集まり、その評価が社内にも浸透し、こうやって商品設計すればいいのかとか、こういうことをアピールすればいいんだという発見につながっていきました。

「倉庫のDNAって何だっけ」みたいなことを、
自分たちでもう一回建て直さなきゃいけない。

―――法人と違って個人が相手で。先ほどおっしゃったような「一点一点(荷物を)空けて写真を撮る」というのは、それまでとは全く違う扱いになると思いますが、みなさんどうお感じになっているのでしょうか?

月森正憲氏:法人のロジスティクスであれば、当然、箱を開けてラベルを貼ったりとか、包装したりとか、中身まで管理するところまで業務委託で受けているのですが、個人の持ち物に関しては「内容未検査」という倉庫の用語ですけど、内容について我々は一切関与しませんというのが常識です。
箱を開けてしまったら壊してしまったり、失くしてしまったりとか、そういうことが非常にリスクと感じていたんですね。だから個人の方が相手の「minikura」で、「一点一点(荷物を)開けて写真を撮る」というサービスに対しては、最初は「なに言ってるの?」と驚かれました。
それと今でこそブランディングをしっかりやっていますが、「minikura」のサービスを開発していく上で、潜在的ユーザー層の声を聞いたりしていると、当時はまだまだトランクルームとも言えない「雑多な物置」という認識だったのではないかと思います。「とりあえず突っ込んどけ」といった感じに。でも、そうすると「何を預けているかも忘れてしまった」「預けていることすら忘れてしまった」ということに繋がります。そこを解決していくために、ノウハウの構築にチャレンジしていきました。
「変わっていかなきゃいけない」「変化していかなきゃいけない」「倉庫のDNAって何だっけ」みたいなことを、自分たちでもう一回建て直さなきゃいけない考えがありましたから。

―――それでも、寺田倉庫の変わらない強みは、やはり「保管・保存」の技術といいますか、そういう部分になってきますよね?

月森正憲氏:「保管・保存」とあとは「モノの取り扱い」ですね。大味のロジスティクスは横にモノが流れていくだけですけど、そこにある程度手を加えたりと、そういった細かい作業が得意ですね。だからこそ、得意であるITを活かして「預かるプラスα」のところを考えていきたいと思いますね。

――倉庫ビジネスにITを掛け合わせ、「預かるプラスα」の価値を創り出す寺田倉庫。預かるだけでなく、保管するモノの価値を創造するとはいったいどういうことなのか? 第3回へと続きます。

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