「買う」とは
どういうことなのか。
その「意味」を変えていく。
2014年、環境教育促進法が施行されました。環境教育:ESD(Education for Sustainable Development)とは、「一人ひとりが世界の人々や将来世代、また、環境との関係性の中で生きていることを認識し、持続可能な社会の実現に向けて行動を変革するための教育のこと」と環境省では定義づけられています。さらに、「具体的には、単なる知識の習得や活動の実践にとどまらず、日々の取り組みの中に持続可能な社会の構築に向けた概念を取り入れ、問題解決に必要な能力・態度を身につけるための工夫を継続していくことが求められています」と続きます。環境教育とはつまり“持続可能な社会の実現に向けて行動の変革を具体的に実践する”人材を育成すること。石坂産業はこの環境教育をまさに社内外で実践・推進しています。
「何をどう買うべきか。買うときにお金を出す。その時金額のことしか考えなくていいのかと。エシカル、フェアトレード、ものを作るときにはその背景があって、そのストーリーが大切なんだと。消費者は「意味」で買うという側面もあるわけです。では「買う」ということはどういうことなんだと。未来へ残すこと、投資をすること、そこが環境教育の究極な根底になります。購買行動や生活するスタイルをどう変えていきますか?そこを考えましょうと。「意味」を変えていく。ストーリーを作るんです。現場に来ればわかる。だから来てください、と。」(熊谷執行役員)
石坂産業が運営する「三富今昔村」は、埼玉県が認定する「体験の機会の場」として埼玉県で唯一認定され、全国の自治体や企業、生活者に対して環境教育を行っています。子供から学生、大人、そして職業訓練に活用したいという企業、環境教育のもと、その活用の広がりはどんどん大きくなってきているそうです。そしてこの環境教育をプラットフォームとして、イノベーションが起きていると熊谷執行役員はいいます。つまり、石坂産業は、単に荒廃した森を再生させ地域に解放しているということのみならず、ここを環境教育の場として全国に展開し、そこから“知のイノベーション”を起こし、新しい価値を創出しようとしているのです。そうすることで、今までの常識である「買う」ということの意味を変え、購買行動を変え、未来に残す、投資をするという新しい認識を作り、石坂産業の主たる事業に結びつけています。
N乗の多面的な価値が
企業を強くする。
価値は誰がつくるのか?それは生活者一人一人の受け手の中に生まれるもので、そこには、1:Nの、N乗の見方があって、価値は多面的に生まれるものだと熊谷執行役員はいいます。価値の共鳴は多様で、いろんな取り組みがメッシュのように繋がり広がって、様々な共鳴感情を作り出すことが企業を強くする。石坂産業は、リサイクル、くぬぎの森、農業や食、里山暮らしの伝承、アートなど、環境教育の幅を広げることによって、多面的な共鳴感情を生み出すことで、CSVを成立させようとしているのです。
「我々の価値をつなげていくことが大切で、つまり、石坂産業と取引することは、地域の自然保全と、文化保全、環境教育について支援しているんだと、お手伝いしているんだと、そういうバリューが生まれてくる。それが我々の求めるチェーンバリューであるわけです。」
環境教育はこのように社外に対する広がりだけでなく、従業員に対しても価値を生み出していると石坂専務は続けておっしゃいます。環境教育の場として、全国の人々に見せるということは、人に見せるための“美的感覚”が養われる。左脳だけでなく、右脳も必要となり、思考の幅が広がり、その結果、改善の幅も広がって、新しいアイデアが従業員から生み出されるようになったと言います。
「今は、B to BよりもB to Cの活動、CSRからCSVになって広がっていますので、あらゆることでチャレンジできるステージがある。個性的なんです。うちの社員は。個性を引き出すのは我々の仕事。気づいてない部分が本人たちにもあって、新しい発見とか、そうすると仕事の幅も自分たちで考えて広げてくれる。新しい発想が生まれたりとかして、我々も見ていて面白いです。」(石坂専務)
未来像に共鳴し、
自走する社会と社員をつくる
石坂産業の目指すパーパス、「自然と美しく生きる」ことで次の世代に残す地球環境。そこに共鳴する社会と社員が、自ら動き走り、共通価値を創造する。そしてそれらを教育的側面から裏付け、広く社会に浸透させることで意識を変えていく「環境教育」。この構造が石坂産業のCSVの源泉ではないかと考察しました。そしてそれがブランド価値を向上させ、「高くても買う」ことにつながり、そこから得られた利益を研究開発に投資する。その投資が98%の高リサイクル化率につながって、さらにパーパスの実現に向かう。この好循環が競合他社の追随を許さない要諦ではないかと思います。