― ―今後の新社会に対する戦略や期待についてお伺いさせてください。
足立社長:2019年8月に新中長期経営計画を発表しました。世の中が激変している中、一番意識しなければいけないのは、業界の境界線が変わっているということです。我々が貢献しているフィールドとして大きく3つあり、1つは環境で、自動車と環境プロセスのビジネスがそこにあたります。エネルギーというのは、どこで、どう作って、どう運んで、どう使うか。そこにはおそらく境目がなくなってくるのではないかと思っています。2018年に買収したFuelCon社の燃料電池部門は、自動車だけではなく、環境プロセスや、科学部門の素材分析にも関連しており、事業セグメントの枠を超えたクロスセグメント的なものになってきています。我々は5つの事業セグメントの経営体制というものを崩す気はありませんが、この「クロスセグメント」という合言葉で、変化する社会に、自分たちをどう合わせていくかを考えています。貢献しているフィールドの2つ目は情報社会を支える、という意味で半導体を含めた素材の部分。言うまでもなくこれから5Gがどんどん進んでいき、半導体製造プロセスはまだまだ成長していくので、効率をよくするためのプロセス制御はもっと複雑になっていくでしょう。3つ目はヘルスケア。我々は医用部門という事業セグメントを持っています。科学の事業セグメントで持っているライフサイエンス向けの分析・計測機器もあります。この3つのフィールドでしっかり成長しよう、というのが中長期計画の戦略です。
我々がやっていることは全てお客さんに対してのサービスだと考えています。その中に機器販売があって、メンテナンスがあって、データ採取もできる。つまり、全部がサービスという言葉で表現できます。ライフサイクルマネジメントという考え方を導入して全体を見ていこう、もっともっとお客さんと寄り添っていこう、堀場製作所がなくてはならない存在になってしまおう、と。どんなに社会が変わろうとこの3つのフィールドは絶対になくならない。
※高い視点から目標を見定め、最速で実現する意思を表現した中長期経営計画のシンボルマーク
― ―最後に一言お願いします。
足立社長:最後は人です。それに尽きる。僕はそれ以外に考えなくてもいいんじゃないかなと思うくらい、人ですね。
インタビューの後、滋賀県大津市にあるびわこ工場「HORIBA BIWAKO E-HARBOR」を見学させて頂きました。琵琶湖が一望できる素晴らしい環境で活き活きと働くホリバリアンの方々を拝見したとき、「どんな人でも皆いい仕事をしたいという基本的な欲望がある」という言葉を思い出しました。様々な技術の潮目や社会の変化に、しなやかにアジャストしながら持続的成長を続けられるその秘訣は、いい仕事をしたいという基本的な欲望を大切にしている企業だからだと感じました。まさに社是である「おもしろおかしく」だと思います。「最後は人、それ以外は考えなくてもいいんじゃないかな」という言葉が印象的でした。