Rashii

General chair, 4D Conference / 立命館大学DML チーフプロデューサー / 立命館大学経営学部 教授 / ミラノ工科大学 経営工学研究所 客員研究員 八重樫先生 デザインマネジメント:デザインの力

「デザインシンキング」という言葉をビジネスのフィールドでよく耳にするようになり久しいです。デザイナーがデザインを行う上で行っている思考法。ビジネスにおいて、問題解決のプロセスとしてデザインを活用することに注目がますます高まっています。ビジネスにおけるデザインの活用は、デザインシンキングだけでなく様々なアプローチがあると、立命館大学DML(デザインマネジメントラボ)チーフプロデューサーも務める、経営学部教授の八重樫先生はおっしゃっています。立命館大学DMLは、「デザインマネジメント」に関する体系的な研究の実現を目指し、国内外の研究ネットワークの構築と、研究知見の交流・集積・発信の場づくりを積極的に行っていくことで、複雑に絡み合うさまざまな知の整理統合を目指しています。今回はそんな八重樫先生に「デザインマネジメント」について、そして「意味のイノベーション」についてお話を聞きながら、デザインの捉え方、企業のパーパスとの関係性を考察していきたいと思います。
取材・文:橋本 和人

お知らせ

デザインをテーマにした国際会議が大阪で行われます。

4Dカンファレンス2019オープニングイベント
2019年10月20日/立命館大学
https://4d-conference2019.peatix.com/
4Dカンファレンス2019
2019年10月21日~23日/大阪国際会議場
http://4d-conference.com/

さまざまな
知のつながりをデザインする

General chair, 4D Conference / 立命館大学DML チーフプロデューサー / 立命館大学経営学部 教授 / ミラノ工科大学 経営工学研究所 客員研究員 八重樫先生 General chair, 4D Conference / 立命館大学DML チーフプロデューサー /
立命館大学経営学部 教授 / ミラノ工科大学 経営工学研究所 客員研究員
八重樫先生

-立命館大学デザインマネジメントラボの活動について教えてください。

八重樫先生: 2010年頃から活動しています。経営学部にいる教員を母体に、経営学が視野とする範囲からデザインを見るということをまず考えて活動しています。デザインマネジメントを研究するという立場は、経営学だけではなくて、いわゆるデザインを専門とする方向からのデザインマネジメントというのも当然ありますが、経営学が範疇とするというところ、例えば会社経営であるとか、組織のマネジメントであるとか、マーケティング、イノベーション、会計・ファイナンスを含む、そちら側からデザインを捉えてみようと。それは個別に研究者の興味や、経営者の興味として行われてきたことはこれまでもあったと思いますが、それを研究組織として体系立ててまとめているというところは日本ではほとんどではなかったので、まず研究ということを第一に掲げて、「デザインマネジメントラボ」としてすすめています。

-その研究の目指すところ、成果をどんなことに役立てていくのでしょうか?

八重樫先生: ひとつは特に海外にあるデザインマネジメントの研究・知見をまとめます。それはまとめるイコール日本に紹介するという機能になっていくと思います。私たち DMLとしては、海外の知見をまとめるというのが主眼なのですが、機能的にはそれを日本社会に紹介する、流通させる、役立てる、というインプリケーションがあると考えています。ですので、デザインマネジメントラボの主旨としては、研究をまず前に、デザインマネジメント研究の体系化というのが一番の目的です。その研究知見を活かして、実際には産学連携や企業のコンサルを行う、経営で起こっている問題課題に対して適用するということで、結果、社会に役立てるのではと考えています。

組織や人との関係、
社会に対する組織の位置づけ
などを問うときに、
デザインの力を
しっかり使えるように
したいのです。

キーワードのネットワーク図 ※DMA2017に投稿された論文のキーワードのネットワーク図 デザインマネジメントのスコープは広い
立命館大学経営学論文「デザインマネジメント研究の射程と願望」より

-デザインマネジメントの分野での「デザイン」とはどのように捉えられておりますか?

八重樫先生: デザインマネジメントの捉え方として大きく二つあって、まず一つは従来のデザインがカバーしてきた領域、製品・商品自体のスタイリングや機能のデザイン、そしてそれをどうやって売っていくのか、エクスペリエンスやサービスが含むところです。これは商品・サービスの一連のデザイン、ある意味わかりやすいデザインマネジメントと言えます。そしてもう一つは、組織を運営していくために、デザインの持っている能力や力をどのように使っていくのかって言うところです。どちらかというと私やDMLは後者の方に主に研究の目を向けています。前者の方が分かりやすいですし、共同研究をやっているとこちらの方が仕事になる。お金が付くのでそちらがバランス的には多いですが、本来やるべき課題、私たちのミッションとしては、うまく組織を動かす運営する、いわば経営するために、方法論の一つとしてデザインを置きたいと考えています。もちろん従来マネジメントの方法論やリーダーシップや人的資源管理みたいな知見がいろいろあると思うのですが、その知見の一つの要素としてあえてデザインを置きたいのです。デザインが持っている色々な力を製品開発やプロモーションやマーケティングイノベーションに使うだけでなく、組織や人との関係、社会に対する組織の位置づけなどを問うときに、その力をしっかり使えるようにしたいのです。デザインには二つの目的を持っていると考えます。

デザインマネジメントの捉え方

「デザイン」という言葉の意味を
広くとらえたときに
可能性が大きく
広がる気がしました。

八重樫先生はデザインをとても大きく捉えていらっしゃっていて、話を聞いていると可能性が大きく広がるイメージがわいて、とてもワクワクしました。私たちが今まで使っていたデザインは、スタイルやフォルム、レイアウトや色などを決める、または絵を描くといった主にビジュアライズさせる活動で、狭義のデザインのことを指していました。しかしもっと広く組織の運営などにも活用するデザインとして広義に解釈できると、今までデザイナーと呼ばれていた人たちの活動の場も広がるし、また逆にデザイナーと呼ばれていなかった人たちも、デザインを操れる可能性が出てくるように思いました。製品・商品・サービス一連のデザインと、社会と組織の位置づけを問う、大きく二つのデザインの関係性について、また、そこに深くかかわる「意味のイノベーション」について八重樫先生にさらに聞いていきます。

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